F.F.雑感
其ノ五百四十一  アサリとフレッシュラン
念のために継ぎ目にシリコン系の接着剤を塗っておいたのが良かったのか? それとも淡水と海水の浸透圧の違いが影響するのか?
いずれにしてもウェーダーに水が入ってこないのは喜ばしい。渓流のヤマメを釣りの時はどれだけ修理しても入ってきてたのに。
でも水に手をつけるとぬるく感じるのは、それだけ気温が低いということだ。
僕は漁港の湾に立ちすっかり晩秋の空気を肌で感じて、夏場のような釣りはあり得ないと今更ながら改めて思った。
そのアサリ養殖場横の河口はKSさんと夏に行き、チヌが釣れなくなった期間にも一度行った西の川だ。川自体は小さいので、干潮からの満ち上がりで川に遡上しようとするチヌたちは結構狭い河口エリアに集まってくるから、ポイントは絞りやすい。
市内の河口手前のフラットは干潮時に出る干潟沿いを探るから、割と長い距離を行ったり来たりする場合がある。アサリ養殖場横の河口は入ってくるチヌたちを、一箇所にとどまり待ち構えて迎え撃つ格好だ。

メスティンのパエリアのアサリを見ていてそんなふうに思いを巡らせているのは、やっぱり行こうと思っているんだろう。実は潮の良い日に有給休暇を申請しているんだからもう確信犯だ。寒くなって諦めがつくなんてどの口が言ってるんだか(^^;)
ただ一気に寒くなったから、ウェットウェーディングという訳にはいかない。釣り場ではウェーダーは履こうと思った。
メスティンでパエリア。アサリを見て・・・思うところが(^^;)
西の川のキビレさんは初。ありがとうございます(*^^*)
河口に着いた時はまだ潮位は高く、僕はウェーダーにエイガードと言う重装備で河口横のアサリ養殖場の手前の浅瀬を見て回った。少し経てば潮が引き砂浜が現れる場所だ。歩いていてウェーダーに水が入ってこないのがとにかく喜ばしい。
よく見ると数匹のチヌがいた。だが僕の気配を察知したようで、すぐに沖方向へ泳ぎ去ってしまった。
大潮なので潮が下がるスピードは早い。そんなに待たずに干潮からの満ち上がりの時合いがやってくる。僕は少し移動してはキャストしつつ、本命の河口に向かって歩いた。養殖場の水際にはすでにアサリを収穫する人たちが数人スタンバイしていた。

もしもこの日釣れなかったらどうしよう。ま、しれっと行っていないことにするだろう。釣具屋でHさんに散々しゃべったが、それは次会った時に釣れなかったのひと言で済む。釣具屋で気づいたプレッシャーの無さはやはりそのままで、僕は平常心なのが我ながら不思議な気がしたが、釣れないチヌ釣りが続きすぎて慣れてしまったのだと思うことにした。
前の週末から西高東低の気圧配置になり、月曜日は最低気温が10度まで下がった。少しつづ季節の移ろいを感じるヒマもない。
こうなるともうチヌをフライで狙う気候じゃない。二週間前にチビマゴチを釣ったのが最後だとぼんやり頭の中で思っていたし、すっかり寒くなってきっぱり諦めもつくと言うものだ。

少し前にメスティンでパエリアを作った。アサリは多めに入れるとうまい。そういやアサリの養殖場の横の河口でチヌが釣れたこともあったなあ。
テールを変えたが、こんな尻尾つけたカニはおらん(~_~;)
どやどやとアサリ収穫の人たちがやってきて引きつつある砂浜に入り始めた。
もう? と思った。前回はもっと海の方へ歩いて出れるくらいに潮が引いた。河口はまだスネくらいまで水があるが、すでに魚影や引き波が見え始めている。どうやらこの日は前回ほど潮が引き切らずに満ち上がり始めるようだ。
僕はここにきていきなり緊張してきた。今まで感じなかったプレッシャーが一気にやってきた。
釣れない事に慣れていようがいまいが、来たからには釣りたいに決まっていた。
アサリや牡蠣殻に紛れてカニさん発見。
ウェーダーをはいての河口フラットの釣り。気温よりも水温が高そう。
ワンポイントのハサミの色がおしゃれです。 
西の川へ行く前に釣具屋に寄った。常連のHさんがいた。寒くなりチヌも期待できないとわかっているが、これから釣りに行く話をした。そればかりか九月上旬に釣ったあと、ひと月半近くの間に何度も行っても釣れないという話までした。
そしてこんなに寒くなったのにまた行こうとしていると。
ずいぶん自分でハードルを上げてしまった形だが、Hさんは普通に聞いていたし、僕はしゃべってみて自分がそれほどプレッシャーに感じていないことに気がついた。
可能性は満ち上がり始めに最初に入ってくる群れの中の、やる気のある数匹のやつのみ。
引き波が来たが僕に気づき方向転換した。僕は少し後退。また引き波が僕に向かってきた。その進行方向へキャストしリトリーブ。
甘噛み・・いや、ラインが引っ張れなくなった。ロッドを立てるとじわりと動いた。
(か、掛かった!!) 僕はリールを巻いた。本当に掛かった。魚体がうねって水面を割った。
調子良く釣れた夏の釣りもひと月半釣れなかった事も関係ない、一匹の重量がロッドに乗った。
どんより肌寒い日だったけど、アサリ収穫の賑わいで紛れました。