2021 釣乃記
第拾伍話  緑の谿に洗われて
まだ小雨の降る中、川へ降りる土手でアマガエルがあちこちに飛び跳ねる。やはり雨が降るとアマガエルも元気になるのか。
川の魚も同じはず。増水の程度にもよるが、今回の雨はギリギリ釣りができる場所が残されていた。
僕とKSさんは数週間前に来た時は別の釣り人に入られて思うように釣りができなかった、そのリベンジにこの川にやってきた。
前に来た時よりも水量は多い。でもこの場所ではベストの水位だ。まずは僕が攻めさせてもらうことにした。
僕の釣った更に数メートル上流側、そこがこのポイントの核心部だ。僕がヤマメの写真を撮っている間、KSさんが慎重に狙う。だいぶ時間が経って、僕が様子を見るとKSさんが下ってきた。この先は険しい区間で増水で遡行は無理らしい。そして核心部ではやや小さめのヤマメが二匹出たのみだったそうだ。
そんなはずはないのだが、と思いながら一旦土手に上がった。田んぼをしている農家の方がいたので話をすると、今朝早くに二人連れの釣り人がここに入ったという。なんと、先行者がいた。この増水で。僕たちも決して遅い時間に来た訳ではない。二回連続ここを他の釣り人に先に入られた。僕はそのことをKSさんに伝えた。

次に僕たちが向かったのはかなりの上流域。ゴギの生息域になる。最初の場所以外ではこの増水だと上流部へ行くしかない。それでも比較的広めの場所。平水ならチョロチョロの流れだから増水するとちょうどよくゴギも高活性になる、という目論見だ。
道の駅ニャンコ先生、おはようございます(*^^*) 眠いにゃ〜(=^o^=)
川もいい感じに広がって、KSさんも快釣。
川は、木々や草の緑は当然だが石も苔むしていたり、木の幹も苔や蔦で覆われていた。
川の流れ以外がほとんど緑色のこの場所にいると、身も心も緑の成分に洗われていくようだ。

僕たちは川のすぐ横で遅い昼食をとった。そしてKSさんのこだわりドリップコーヒーを頂いた。
川筋を風が吹き抜けた。なんとも気持ちいい。僕は椅子に深く沈み込んで、できればこのまま眠ってしまいたかった。
増水の流れの対岸スレスレ。ドラグフリーで数秒、出ない。
KSさんが後ろで見ている。僕は平常心を心掛け、また対岸へキャスト。岸から木の枝が張り出している、その下をフライがくぐった時、バシャっと飛沫。
合わす、グンっと重量が伝わる。掛かったヤマメが流れくだる。僕も下りながら流心からこちらへ引き寄せ、ネットですくった。
KSさんの見ている前でバラさずに済んだ。次はKSさん。ここはあと二匹は釣れるはず。
数年ぶりにゴギさんの数釣りを楽しめました(*^^*)
この日の朝の幅広ヤマメさん。美しい魚体はやはり増水に磨かれて?
続いて僕。だいぶ小さいの。そしてまたKSさんが。
僕の記憶では平水だと釣れないから飛ばしていた場所で出る。どうやら予想は当たっているっぽい。しかしそこはゴギのことなので王道ポイントから外れた所に身を潜めている。
僕もKSさんもそういういかにもなポイントを探っていった。
小プールの反転流、フライを落とすとうまいことぐるっと一周した。と、二周目に入る直前にバシャっと出た。ゴギはずっとフライを見ていたんだ。
KSさんこだわりのドリップコーヒー、ごちそうさま。
運よく良型キャッチ(^^;) *写真撮影 KSさん
もぐもぐタイムのリラックス。 *写真撮影 KSさん
目当ての川のポイントへの降り口付近に車はなかった。最初はとにかく川が狭い。僕たちはそこそこに攻めて上流を目指した。
嫌になる程のブッシュや張り出した枝の密集地帯を抜けるとまるで別の川のように空間が広がった。
「フライフィッシング向きの川だね」と、KSさんは急に開けた川筋の空間に驚いて言った。
ただこの川は平水だとあまり釣れない。増水で釣れる予想が当たってくれよと僕は祈った。
まずKSさんが釣った。20cmくらいのゴギ。まずまずのサイズ。