其ノ三百一  冬が始まる島
まだこの時は晴れ間もあり、暖かな日曜日だった。
実は、と言うか、あらためてここで書くほどのことでもないのだが、ここのところちょこちょこ友人と夜の海に釣りに出掛けていた。
そして見事なまでに一匹も釣っていない。少し前にそろえたエギングロッドやリールもまだ未入魂のままだ。
夜はフライでもやっているのだが、これが釣れない。夜の方が釣れると思っていたのに、夜の方が釣れない。やり方もあるのだろう。海の釣りに対して少し焦りが出始めていた。
週の半ばでぐっと冷える日があったが、週末はまた緩む予報だった。朝は冷えたが日中は穏やかに晴れて、というのを期待していた。出がけは晴れ間もあり、これなら潮流のある間は大丈夫だろうと思っていた。
初めての港は風景が違う。なんとなく気分が新鮮になるのがいい。大型船の停泊する防波堤は厳重なゲートがあった。それならと内湾の小さな防波堤へ向かった。突端にはひとり釣り人がいた。
僕は防波堤の付け根あたりから攻め始めた。まだ満潮から少し下がった程度の潮位だ。水面近くに小魚が群れているのが見える。その下に大型がいなか、目を凝らす。
この日はちゃんと偏光グラスを持ってきた。偏光もだが、とにかく目を守るためのものとしてだ。
上空は晴れ間が見えたり曇ったりだった。気温は上がっている様子ではなく肌寒い。風がないのが救いだった。
潮位はだいぶ下がってきた。思うような反応がない。まだ潮流があるうちに他の場所へ移動しようかとも考えたが、この日のこの港をチョイスしたインスピレーションも信じたい。
もう少し粘る事にしてそれまで付けていたシラスのフライをソルトウォーターゾンカーに変えた。
コレにするということは、アレを狙うということだ。
なんだか急に薄暗くなり、寒々とした風景に・・。
夜釣りでボウズのあとの昼間のフライでの釣り。この週末、またもこのパターンで気持ちの落ち着かせどころを探ることにした。
午前中10時から12時が下げ潮の潮流という僕好みの潮だった。ここで欲が出た。どうせ行くなら初めて行く場所にしよう。
僕は島は同じでも行った事のない港を目指した。
ヤマ勘でやってきた港。大きな船が停泊してる。釣り人は見る限り3人。いい感じだ。
今回もこやつ。・・・いや、良しとします。
前夜巻いたばかりのオフセットフックを使ったゾンカーだった。
ゆるゆると気持ち良さそうに、いや気持ち悪そうに泳がせる。
ススッとゾンカーに近づく魚影が見えた。(ホントに!?)
まさかと思ったが狙って狙い通りにアナハゼが釣れた。
僕は少し気持ちの落ち着かせどころを見つけられた気がした。
僕にはやはりエギングロッドよりフライロッドが手に馴染む。
少し風が出てきた。それはちょっと冷たくて冬の風のようだった。
今回もコレが活躍してくれました。
ランチの時は晴れ間が戻った。しかし、寒い。
このどんより感、ロッド支払いを残した僕の心を映している?σ(^_^;)
先週夜釣りに出掛けた時、僕は自分でしゃくったエギを目のすぐ上にぶつけてしまった。幸い怪我はせずに済んだが、メガネはしていなかった。これで目に当たっていたらどうなっていたか? 考えただけでもゾッとする。
それでメガネは必ずしようと思った訳だが、それだけではなくやはりエギングが自分に合っていないという気が強くしてきた。まだ払いの終わっていないロッドとリールのことを考えると気分が重くなってくるのだが。迷走している僕の海の釣りに落ち着かせどころを見つけるのがこの日の釣りの目的だった。
突端の釣り人が帰って行った。これでこの防波堤は僕の独占となった。