其ノ三百七  ソルトウォーターの失速
まずはのんびり海岸飯。この時はまだのん気だった。
元旦初釣りはそれでもまずまずの満足度は得られた。
去年の連続ヒットの流れは途絶えてはいないように思えた。
その流れをもう一回確かめたくて、初釣りから何日も経たないうちにまた海に出掛けた。
今回は前回、前々回に行った七つの橋のかかる島ではなく、もう少し手前の島へ向かった。
複雑に入りくんだ海岸線は、あちこちに港があるので釣り場には困らない。
今回も簡単に釣れる。ロッドを降る前からそう思っていた。
潮流の始まる午後まではゆっくりしようと昼食をとったり神社巡りをしたりして時間をつぶした。
陽射しはあるし風はないし、新年になって間もない時期とは思えない天気だった。
頃合いを見て最初の港に向かう。少し雲が出てきていた。港の防波堤には釣り人はひとり。ここは四年前、携帯釣り師がいた港だ。
今回の先行釣り師は口笛を吹きながらいいペースで釣り上げていた。僕も早速キャストした。
いろんな鳥が混じって飛んで。
防波堤の外側、内側。自信のドロッパーシステムで攻めてみたが、思うような反応はない。
一度フライに食いついたがすぐにバレた。その時例の釣り師の口笛が聞こえた。なんだか気になり始めたので、この港は諦めることにした。
島の沿岸部を南下。すぐに次の港がやってくる。だがここではろくにロッドを振る事はなかった。
なんというか、全く釣れる気がしなかったからだ。鏡のような水面はメバルたちの活性を一切感じられなかった。
晴れたり曇ったり。寒くはないがなんだか物足りない!?
一枚脱げばよかったな、と思うくらいの陽気になってきた。小さなメバルがライズした。カモメも悠々自適に飛んでいる。
やはりこの凪がフライに向かないのか? たまたまか?
ラインが舞い上がるほどの強風もいやだし、ちょうどいい荒れ具合の天気なんて狙って行けるわけもない。行った時の天気頼み? なんだかそれも・・・。
でもこんなことが繰り返されることが、釣りなのだろう。
僕はドロッパーをチェックして、もう一度キャストした。
夕まづめだけど・・・、干潮潮止まり。
元旦の初釣りは風速8mの中でだった。それから比べたらこの日は穏やかでフライで海をやるなら絶好の条件だと思っていた。なのになんだか様子が変だ。三ヶ所目の港もパッとしない。どうパッとしないか? 海が穏やか過ぎる、ということだと僕はぼんやり考え始めていた。
メバル凪、というらしいがそれは夜のことだろうし、日中でやる僕にとって凪は着水の衝撃がもろに伝わってしまう、良くない条件になりそうな気がした。
やはりフライライン、しかもタイプlVのシューティングの着水はかなり派手だ。風があり波のある方がその衝撃はごまかされやすい。凪だとラインの着水でごっそりメバルたちを散らしてしまっているのではないか?
辛うじて、ボウズはまぬがれたのだが・・・。
下げ潮の潮流の時間帯だが、水面が騒めくほどではない。中潮というのも影響があったのだろうか。
結局4ヶ所移動しての5ヶ所目の港。ここは毎回なんらかの反応はある、ソルトフライと相性のいい港だ。
しかも今結んでいるライトウェイトのフライもドロッパーもここでは初めて試す。場所の相性がよくて直近二回はまずまずの結果を出しているシステムで、なのだからコレはいけるだろう。