F.F.雑感
其ノ五百十二  水面を釣る日
夕暮れの港。日中の穏やかさはそのままにゆっくり暮れなずんでいく。
「そこでやらせてもらっていいですか?」と声がした。「サヨリ釣りたいんです」 
「はあどうぞ」と僕は言った。
上に電線がある僕の立ち位置でサイドキャストで投げるに十分なスペースを開けてその人は準備を始めた。
「フライですか。釣れますか」
「いやー、釣れないです。特にこんな穏やかな日は」と僕は言いながら(確かになー。この凪いだ海。釣れる気がせん)と思った。風がないのは助かるが、ここまで見事に無風とは。
前にKSさんがテンポよく釣っていたし、まずはフローティングラインでやってみる。
外海側を覗くとゴミやら流れ藻が漂っている。潮流が運んでここに集まる流れのようだ。
目を凝らしてよく見ると、水面近くにメバルがたくさん浮いている。ライズもしている。もう水面での釣りの条件が完全に整っているじゃないか。
僕ははやる気持ちを抑えつつ、メバルを散らさないようにキャストした。バシャっと大きく飛沫。フライのすぐ横だ。
予報通りの穏やかな日。それは苦戦の始まりでもある(!?)
オキアミとは似ても似つかぬフライ。しかしメバルの反応はすこぶる良好。
ブルーバックの精悍メバル様(*^^*)
メバルのライズは今までにも遭遇したことはあったが、こんな派手なのは初めて見た。
また飛沫、今度は僕のフライに出た。小型だがよく引くメバル。そこから一投一匹が始まった。
ゆっくりリトリーブでググッとくる。あるいはいきなり飛沫、水底から突進してフライをひったくるメバルが見える場合もある。
KSさんと行った時やそのあとのどうにかこうにかの水面の釣りとは全く別物。本当に水面で釣っている手応えがある。
少し経つと反応が鈍った。下の方の良いサイズは出てこなかった。
最初はフローティングラインで。チビメバルとクサフグが一匹づつ。なにやら魚影は見えているがフライに反応しない。(やっぱり沈ませよう)僕は車に戻りシンキングラインとそれをセットするロッドを取ってきた。フローティングのロッドは電柱に立てかけ、ストラップで縛って固定した。
お隣のサヨリさんはまだ釣れていない。その先に派手に撒き餌をして釣っている二人組、さらに先に親子連れ、若い二人組。穏やかだからか、さすがに賑わっている。と、サヨリさんがリールを巻き始めた。良い型のサヨリが掛かっていた。
「ようやく集まってきました。スズメダイをかわしてサヨリに食わせないといけないから大変」とサヨリさんは言っていた。
きっちり魚種を絞って釣り分けるのってすごいなーって思ってしまう。僕は引いて釣れればメバルでなくてもいいと思っているし。しかし、シンキングにしてもアタリひとつなかった。
この季節ならではの、空気の澄んだ日の夕暮れ。
このブルーグリーンの色に魅せられて(^^;)
いつの間にか日が傾いていた。昼飯食ってないな〜。
そして日没直前、かなりのサイズが水面を割って出た。潜り込まれるのを耐えなんとか引き寄せ防波堤上にあげた。やったと思っているとメバルは飛び跳ね海に落ちてしまった。フックは外れていた。
釣ったことになるよな〜。水面の釣りは十分楽しめたし、手応えもあった。でも最後のメバルは写真くらい撮りたかった。
これから夜にかけて始める釣り人が次々とやってきた。
僕はメバルを落としたモヤモヤは港に置いて帰ることにした。


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「場所変えます」僕はサヨリさんにそう告げて車に向かった。満潮は13時、あと2時間くらいか。それまでに満足するメバルが釣れれば、お昼すぎには昼飯が食べられる。僕はKSさんと行ったことのある港を目指した。一応はフローティングラインでの釣りを果たせた最初の場所。車で20分くらいで到着、島の道は地形の複雑さも手伝ってなかなかややこしい。
その港に着いて僕はこれはダメだろうと思った。釣り人が防波堤先端に一人いるだけだった。釣り人がいないのは釣れないからいない。釣法の違いによる釣果の差はあるが、ほぼそれで合っていると思う。
せっかく来たんだからちょっとやってみたが、確かに海を覗き込んでも最初の港以上に生気を感じられない。良い時は良いんだろうけど、ここに来る人はその時合を心得ているんだろう。

今年の二月に初めて行って、その後数回、そしてKSさんとも行った港へ移動した。以前から聞いていたしネットで調べてみても書いてあったが、釣りではかなり有名な場所らしい。数人の釣り人がいたがスペース的には十分出来そうだ。