F.F.雑感
其ノ五百三十四  まだ夏の島と、フラット
湾の岸よりに何か浮かんでいる。コンビニ袋かペットボトルのようだ。
不自然なのはそれが移動しているということ。まるでその下に魚がいて、コンビニ袋が背鰭にでも引っ掛かっているかのように。
見えている物の正体はわからないが、観察していて確信した。移動の仕方はどう見ても魚だ。
僕は水際まで近づいた。物体が回遊してくる。キャスティングしようとすると、グネッとうねって波をたて、そいつは沖へ去った。
チヌだった。見えていたのは背中だ。
結局前回島のチヌを釣った場所へ向かう。途中のなんでもない海岸で車を停め、少し眠った。この日の未明、スマホの緊急通報が鳴り響き目が覚めてしまった。かなりの大雨が降ったのだが、雨雲の通過は早く被害はでなかった。
朝が近くなる頃にようやくうとうとし始めたが、これまた間が悪い事に朝から前の道路に埋めてあるガス管の更新工事が始まりもう眠れなくなった。
島にきて一箇所やったところで猛烈に眠たくなった。木陰のパーキングエリアを見つけて遠慮なく眠る。目が覚めると干潮少し前だった。例の場所に着く頃は満ち上がりのいいタイミングになる。
ふと車を停めたところの海岸を見ると、チヌがいるではないか。底の何かをついばんでいる。僕は急いでロッドを持ち出し、そろりと海岸へ降りた。降りると低い位置からはチヌの姿が見えない。大体の場所の見当をつけてキャスト。反応はなかった。
湾内は風がなく、容赦無く暑い。
割と新しいハミ跡。食い気のあるやつが入ってきているな。
干潮までまだ時間があったが、水際をキャストしていった。前の日の緊急警報の雨で大濁りだと思いきや、水は割と澄んでいた。少し前の泥濁りの時に、水際から少し離れたレーンで連続で釣ったやり方をこの日もするつもりでいたが当てが外れた。それでも同じやり方がイケるかもと河口へくだっていった。
すると水際でヒレが動いているのが見える。(テイリングだっ!)僕ははやる気持ちを抑えてキャストした。しかし様子がおかしい。尾ひれよりも背鰭や胸びれが水面に出ている。よく見るとハミ跡の窪みに溜まった水の中にチヌがいた。周りが潮が引いて浅くなり出られなくなったようだ。僕は流れに返してやろうとチヌを腹から抱えかけたその時、思いっきり暴れられて泥を身体中にひっかけられた。
前回初の島チヌを釣った七つの橋の島にまたやってきた。
前回の時に、以前KSさんとチヌが釣れそうとあたりをつけていた湾は魚の気配はなかったが、タイミングが違えばチヌが入ってくると思い、またやってきてのコンビニ袋と思ったチヌだった。
(けっこうデカかった)僕はなんとなく今のがこの日の最大のチャンスだったんだと思った。まだ時間はたっぷりあるが、弱気だ。

島は暑い。島の入り込んだ湾は風が全く吹かなかった。
やはり安定の効果がこのカニパターンにはあるようです。
泥まみれになったが、魚が居ることはわかった。
さらにくだっていくと、満ち上がりの時にはやりたい岩が点在する場所にルアーマンが入った。僕が場所を空けていたから仕方ない。するとさらに二人が上流の方に入った。日曜日は多いな。そういえば前日の島は帰る頃にはエギングの人が大挙して押しかけてきていた。イカのシーズンも盛期だ。
上流側を押さえられ、僕はさらに下った。泥まみれに追い討ちをかけるように、ズブズブハマるエリアだった。
袖だけでなくバッグに帽子に偏光グラスまで(>_<;)。
島の木陰ですやすやタイム。渓流のと違ってかなり本気寝です。
泥ぶっかけの犯人は君だ。 
フラットに立つと、なんとも涼しかった。曇っていたし気持ちいい風が吹いていた。夏から秋へ変わろうとしているのがわかった。
前の日の島は無風でとにかく暑かった。さらには結局最後まで釣れなかったから、暑さと徒労感でダメージも倍だった。島チヌを二回続けて手にすることは叶わなかった。
そうなると翌日が日曜日であろうとも、緊急警報が出るくらい強い雨が降った後だろうとも、市内フラットへ行くしかなかった。
グッときた。(掛かった!!)
僕はラインを巻きとりファイトの体制に入った。と、ずるっと木の枝が浮上した。
確かに上流側を押さえられ、ここでやるしかないのだが、なんだか気配というか活性を感じる。
僕の中で(イケる)と声が響く。キャスト、リトリーブ。クッと感触、ククッと感触、少し経ってグーッときた。(きたっ!)
今度こそっ! と、僕はリールを巻いた。ラインの先には確かに僕の脳内を刺激するファイトの主がいた。
前日の島のリベンジを果たせました、キビレさん。