2015 釣乃記
第拾伍話  ゴギと一眼と鍾馗
夕方から降り出す予報に、
「サクッと釣ってサクッと帰ろう」なんてのん気にそんなことを言っていた。
谷に降りた時点でぽつりと小さな雨粒は落ち始めていた。
僕が早速ゴギを掛けたが水中の木にティペットを絡まれ、バレてしまった。
Yはウェットアントで攻めるからしばらくは僕に先に行けと促してきた。
最初っからゴギを釣ろうと出掛けてきたのは今季はこの日が初めてだった。
今年の初のゴギ狙い。ゴギ釣りらしい釣りを。
高密度ゴギゾーンに入ってきた。
水深も浅い。こうなるとドライがよくなる。Yもドライにチェンジ。テンポよく釣れ始めた。
僕がまずまずのゴギを掛けた時、Yが「うおーっ! でかい!」と叫んだ。いや、そうでもないんだけど。ネットですくってYに見せると、23cmくらいのサイズにびっくりしていた。
「Showki(鍾馗)だからよく曲がるんよ」と僕はYにマエカワクラフトのロッドを見せた。Yも持っているはずのロッドだ。
もはや岩づたいに歩くばっかりの源流域。
この日のYの釣行テーマには、撮影の試みが加えられていた。
ミラーレス一眼を谷へ持ち込むなどと、僕にはそんな度胸はなかった(昔はフィルムの小型一眼に交換レンズまで持ってきていた。あの頃は何にしても若かった(^_^;)
しかもYは50数mmのレンズを装着していた。35mm換算で100数十mmとなる。
僕が一眼を持ってきていた頃はレンズは広角かマクロだった。
中望遠レンズという発想がなかった。当然それでないと撮れない写真が撮れる。楽しみだ。
右手にロッド、背中にカメラ。ひとこけ ウン十万です、お気を付けて(>▽<;)
Yとの今季初釣行。せっかくなので僕の新しい車で釣りに行こう、となりそうなものだったが、Yがリクエストした谷は途中の道が悪い。
即、Yの車で行くことになった。

ゴギなら無難に釣果はあげられると踏んでいたが、思うように反応が続かない。
後から来ているYの沈めての釣りの方が反応はよかった。
この谷は魚影に偏りがある。もうじきドライでもよく出るところに着く頃だ。それまで辛抱辛抱。
ゴギポイント、狙ってますね、自分σ(^_^;)   Photo by Y
姫蓮華が岩を覆っていた。
鮮やかオレンジ腹のゴギ。
尺を楽に越えるゴギ。超スリムですが(^_^;
渓流ポートレート。なかなか撮れるものではありません。
Photo by Y
また僕にヒット。するとまたYが叫ぶ。
「うおっ! 27,8cmあるんじゃないー?」
と、声が飛ぶ。僕はそうでもないのだと引きの感触でわかっていた。ところが案外引きが強い。ネットですくおうとしてもまたのされる。
ようやくキャッチしてYに見せる。Yはまたびっくりしている。
「なんなん? そのロッド!?」とY。どうやらファイト中はそうとう曲がっているらしい。その直後、今度はYにこの日一番のゴギがかかった。食糧事情のきびしさが魚体に現れている一匹だった。

釣り始めに気付いていた雨はその後おさまっていたようだが、また落ち始めた。
ゴギはこの雨の降り始めに敏感だ。一気に活性が上がるので、それまでどこに居たのか? というくらいに釣れ始めることがある。
とは言え山奥の源流域、急激に降り出したら危険も伴う。今ならまだ退渓ルートが近い。
僕とYは、ロッドの曲がり具合とシャッターを切った手応えをそれぞれ携えて、帰路に着く事になんの抵抗もなかった。
自撮りでは撮れないこの写真。  Photo by Y
途中、Yの撮った写真を見せてもらう。おお、やはり中望遠レンズ、釣り場での被写界深度の浅い写真は新鮮だ。
僕の方はと言えば、今年の釣りでは何度か沈してしまっていて、バランス能力が低下しつつあることを実感した。それは仕方のないことで、それに自身が対応していかなければならない。そんなだから、やや大振りになるミラーレス一眼を釣りに持っていくことは断念せざるを得ない。ただでさえ、今釣りに持ち込んでいるGRを何度も水没させているということもあるし。
これが撮影に専念するということでロッドを持たずカメラだけ持っていくのなら話は別だ。いつかそういう機会があるかもしれないので、それまではGRにがんばってもらうことにしよう。