2015 釣乃記
第弐拾弐話  ゴギの谷の夏休み
キャンプから一夜明け、一緒にキャンプしたKさんのホットサンドとコーヒーで充実の朝食。
キャンプ地から釣り場へ向かうには自宅から行くよりも有利、というおおかたの予想を裏切り、もたもたするのが常のキャンプの朝であった(^_^;
目指すゴギの谷は入渓者も多く、今から行っても早い人は入っているかもしれないが、とにかく行ってみることに。TさんとKさんも賛同し、Tさんのボルボで出発した。
Mossは乾燥のためキャンプ場でお留守番。
各々、何匹がゴギを手にしたが今ひとつペースが上がらない。
この谷のゴギ爆釣伝説も年を追うごとに薄れてきている印象だ。
Tさんはこういう場所でも精力的にロングティペットで挑んでいる。残り少ない漁期なのだから、今実践でやっておかないと身に付かないのかもしれない。
Kさんは枝のかぶさったポイントにボゥ&ロゥで器用にフライを送り込んでいた。ゲータースタイルもよく似合っていて、源流を闊歩しているのだという自信が現れているようだ。
この谷のゴギはだいたいこのサイズが最大。エサ不足か?
ここでは珍しく中規模のプール。その時誰が投げるかは運でしかない。その運は僕に巡ってきた。
一投目、一番良さそうな流れにフライを落とす。反応無し。
そのまま手前まで流そうとしていると、予想だにしなかった脇の方からゴギが出てきて食いついた。
慌てたのは僕だ。ぎりぎりフッキングに成功。寄せているとそれよりも大きいゴギがついてきた。

まだまだ大きいヤツがいるね、と僕たちはもう少しだけこの谷の可能性を信じて上流へ向かった。
林道の奥、車を停めるスペースには先行者の車はなかった。
よしとばかりに僕たちは手早く準備をし、川へ下りた。
最初の区間は飛ばし、途中の良い所から釣りを開始した。
まずは僕が振ってすぐ一匹。この谷のアベレージのゴギだ。あまり大型は期待できないが、ここならテンポよく釣れるはずだった。
続いてこの谷初体験のKさんが振る。6ピースのパックロッドで帰りは手ぶらで歩ける、と言う彼だが、やはりこういう上流域の釣りは慣れているようだ。
苔むした岩のポイントで、狙いを定めるTさん。
釣行序盤、ゆっくりペースで釣り上がる。
源流をよく知っているKさんにいくつか聞いてみた。
この季節、この川にはクモの巣がないが、どこもそうなのか? 
Kさんはだいたいそうだと言う。やっぱりそうだったか。だから釣りはしやすい。この谷は川筋は木々がかぶさっていないので、キャスティングも楽だ。
しかしここのゴギのアベレージサイズからいっても痩せ具合からしても、エサになるものが少ない気がする。
エサの少ないところにはクモも多大な労力払ってまで巣を張ったりしないか。
僕たちは更に上流を目指した。
入渓してすぐは気温も低く川筋をわたるそよ風が気持ちよかった。
誰も訪れない(山歩きのグループには出会った)渓流の源流帯でゴギを釣り、風にあたる。
猛暑の町に居る人たちには味わう事の出来ない至上の気持ちよさだった。
しかし次第に気温は上がり、それとともに風は吹かなくなった。
遠くでセミが鳴いている。それが川通しにこだましていた。

しばらくの間、誰もゴギを手にしていないまま時間は過ぎた。
正に水を得た魚、のようなKさん。
源流の気持ちよさ、持って帰れたらなあ。