2015 釣乃記
第弐拾話  夏ヤマメの消息 -壱-
ドライフライの効果が発揮されないのでは? そう思えるくらいに明らかに水が多かった。
沈ませるパターンは持ってきていない。この日からフライボックスはひとつにしていた。
思い掛けない増水に、川通しの遡行は無理でも場所によってはチャンスかも知れない、と案外落胆はしていない自分も予想外だった。

この日の川は開けている。すでに日ざしはさんさんと照りつけ、およそヤマメが捕食行動など起こしそうになかった。
この暑さにオニヤンマ様もたまらずご休憩。
こういう開けた川は渓流と大きく違って、葦の成長がものすごい。
かなり源流域でも葦に覆われている川はいくつかある。今回の川もそういった感じだが、それにしてもすごい事になっていた。
それでもよさそうなポイントはあるので、ていねいに攻めてみた。
しかし、出ない。よさそうというのは人が見ての話だ。ヤマメにはヤマメの都合がある。
ジリジリ照りつける太陽の光に僕は早くも根を上げ、移動しようと思った。しかし最初の予想通り遡行は無理っぽく、一旦車へ引き上げることにした。
夏空。気持ちよさと手ごわさの象徴でもあるような。
疲れ果てた。ボサボサ区間の途中から昼ご飯のことばかり考えていた。ようやく道に上がり車で移動。昼食にした。
止めどなく流れる汗、首筋の日焼け、体中にまとわりつくクモの巣。もう修業と言う他ない。
ランチ会場キャンプ場炊事棟の屋根の下、食べ終わって少し横になった。川からの風が気持ちいい。雲がちぎれて流れていく。
考えてみれば山奥深いゴギの谷ではあまり見れない、本来の夏、という風景だなあ。
僕はそんなことを考えながらウトウトし始めた。
前回Tさんとの釣りの舞台となった深い谷の渓流とはずいぶん違った。前回の谷は結構暗かった。
キャストしたフライも見えにくくティペットの結び変えも困難を極めた。
そこへいくと開けた川は光量は十分だがとにかく暑い。クモの巣も多い。それぞれに一長一短があるが、なによりも肝心のヤマメが釣れるのだろうか? とも思う。
結局それが一番大事なところで、急に僕はこの日の川の選択で大きなミスを冒しているのではないかと不安になった。
空と川と葦しか見えんな〜(+_+)
渇水が当たり前の季節の増水に、よたつきまくってます(^_^;
結局、ボサボサとクモの巣、その両方だった。
そのおかげでティペット部の痛み、ライントラブル、フライのロストが次々と起こる。
こうなるともうなにをやっているのかわからなくなってくる。
思えばゴギの谷は暗いと言う事を除けば、クモの巣は少なく川筋が葦で覆われている事もなく、木陰が続き、風でも吹こうものなら天国のような気持ちよさがある。
あ、でもゴギ谷でうんざりするブヨはここではいなかった。代わりによくわからない虫に刺されまくったが。
「なんだ〜、葦で埋まって水面が見えんな〜(>_<)」
帰りの高速SAで岩魚茶漬け丼。やっぱりうまい。
全く釣れないなんてことはないだろう、と簡単に考えていたが、その事態もないとは言えない。ただこの日は水が多すぎてダメなのか、もとからダメなのかがわからない。もう少し上流域へ行けばまた違うかもしれず、僕は車を発進させた。
「釣れますか〜?」と地元の農家の方が声をかけてきた。「いや〜、ダメです。暑いんで」 じゃあなんで来たのか? と言われそうだ。自分でそう思っているんだから。
上流域、川筋が木々の陰になっているあたりをやってみる。陰になっているということは、ボサボサか、クモの巣が張り巡らされているか、ということでもある。
ランチはいなばのタイカレーグリーン。二個いきました。