2015 釣乃記
第弐拾伍話  不確実な禁漁
濁りは見られない。
僕は車の窓から川をのぞきながら安堵の溜息をついた。
週の半ばの台風の影響があるのかないのか? かなり降った事は間違いなく、すると場所場所で影響の度合いが違うはず。
そうなると、行ってみなければわからない、といういつものヤツ。
厚い雲におおわれ日ざしはないが蒸し暑い。台風通過後も雨雲は活発化していて、いつ降り出してもおかしくない空模様だった。
でも来たのだからもうやるしかないという、これもいつものヤツ。
僕は指揮者でもないし、踊っているのでもありませんσ(^_^;)
最初の有望ポイント。いきなり渋い出方で飛沫があがった。
うー、居たか。しかしもう出ないかー。もう一度流すとまた出た。
空振り。さすがにもう出ない。
次のポイントは葦にはばまれ満足のいく攻め方はできなかった。
三番目、ライズがあったような気がしたが、木の枝からの滴だっただろうか? 流しても反応なし。
四番目は木の枝がかぶさる奥に流し込んだ。スッとフライに魚体が出たが空振り。もう出ない。
五番目は大場所プール。ここもうまく攻めきれなかった。
僕が止めない限り釣りは終わらない。
無論最初から釣れる事が保証されていたら、面白くも何ともない訳で。
どうなるかわからない不確実さが面白さの最大の要素でもある。
そもそもこの日は前日までは僕自身が釣りに行くかどうかの決心もふわふわしていた。
そして来るには来たが、天気、川の状態、魚の活性と、不確実だらけだったのだ。
賭けのようでもあるが、そこからが自力で目的を獲得するというプロセスの始まりなのだ。
前回の釣りで辛うじて最後の最後に良型ゴギを釣る事ができ、これで終わればシーズンの有終の美、とすることもできた。
しかしもう一週残っていた。行かないからと言って、逃げた事にはならないよな、うん。
などと考えていた時点で、まあまず行くだろうな、と思っていた。
ただ結果が思わしくなかったら、やっぱり前の週の良型ゴギを最後にしときゃよかったのに、という後悔が出てくるかも知れない。
終わり良ければすべて良し、と考えるならこの日の釣りは非常にリスキーだった。
CX-3のラゲッジスペースはかなり控えめ。
浮力0のドライフライ。見えれば釣力効果抜群?
狙いの場所はやや増水。この川で釣りをする場合のベストではないだろうか? ここも濁りはない。
まずは釣りができることにひと安心。状況によっては竿も出せずに帰ることだってあり得たから。
いくらかもやが立ちこめる流れを釣り上がった。しばらくは反応はない。この川はチャラ瀬が多く多少水位が高くても魚の隠れ場所になるところが少ない。
有望ポイントも数えるほどしかない。果たして釣れるのか?
釣りができるかというのをクリアしたら、次が本題。釣れるかどうかだ?
渓流最終ランチはお気に入りの冷凍炒飯と出前一丁で。
この川の有望ポイントラスト。横から沢が流れ込む合流点。
ていねいを心がけキャスト。しかし流れにもまれてフライは沈んでしまった。ドラグもかかってしまい浮いてこない。
ピックアップしようとすると上がらない。なにか掛かっている!?
アマゴだっ!! ハリ掛かりは? バレないか!?

釣れ方までが不確実だったがこれで禁漁前最後の目的は果たせた。
しかし不確実な僕は次の一匹を求めて更に上流へ向かった。
ランチ会場は極上の水上カフェで。
その一匹が一日、いや 一シーズンを左右する。
高原でパシャリ。今シーズンよく走ってくれました。