ふと思い立ってテレビのHDレコーダーのHDMIケーブルを外しAppleTVのケーブルに差し替えた。春先に使って以来だで放ったらかしだった。
アップデートがあったので適用すると、Huluというテレビドラマや映画を見るサービスが新たにメニューに加わっていた。
こりゃちょっとAppleTVの活用の幅が広がったかな。
そういや春先はAppleTVのYouTubeでクラシックを聴いたりしてたっけ。
雲が流れ夏を押しやり次の季節を連れて来る。
前回の釣りで今年ラストと思っていたがどうにも気持ちの収まりがつかず、もう一度渓に向かった。
禁漁ぎりぎり前に山の方でいくらか雨が降った。迷わず累加雨量の一番多い川を釣行先に選んだ。
降れば釣れる、とそう単純に行く訳がない。その通りだったし。

ゴギゾーンに入っていくらか出たが掛からない。
川の水がどうこういう以前に魚自体の絶対数が少ない、どうもそんな気がしてきた。
ちっちゃいー、ヤマメ。釣ってごめんなさい。
まるでずっと僕のフライを待っていてくれたかのように、ここで出るのが当たり前と言う風に、ゴギが飛び出した。
ゴギ一匹がこんなに遠いのか、と僕は掛かった瞬間からゴギへの労をねぎらう気持ちが沸いていた。

ムッと湿気を帯びた風が吹いた。はらはらと葉が舞い落ちる。すでに色づいた葉も混じっていた。
そろそろ川もゴギも限界のような気がしてきた。
やはり疲れた様子のゴギ。来年まで元気で。
やっぱりね、雨降ったけどちょっと少ないか。
あ、出た。
まるでそうなることがあり得ないと思っていた自分が意外だったがとにかく掛かった。
ラインの先に確かに生命反応はあるが、ずいぶんと弱々しいものなのがすぐにわかった。
いくらか雨は降ったようで、川だけでなく山全体がしっとりとしていた。だがたっぷりの水量とはいかずもう少し降ればなあというところだった。
小さなヤマメをリリースし、僕はゴギゾーンへと入って行った。
またセミの大合唱。その中に覚えのある旋律が聴こえた。
ショパン? 空耳か? まさかセミがノクターンなんてね。その旋律は解禁の頃を少し思い出させた。
どうするか決めかねたまま車の所まで戻ってきた。
すると風で落ちた葉っぱが車の上にたくさん乗っかっていた。
それを見るとまるで季節の境目とともに釣りは終わりだよ、と宣告された気がした。
まてまて、そうはいかんよ。僕はボンネットの落ち葉を振り払らった。もう一匹釣るぞ、と僕は袖をまくった。
よーし、山を越えて次の谷じゃあ。
セミがさわがしく鳴き出した。木々の間で鳴く蝉の声が響きあって谷全体が鳴いているように聞こえる。
それにしてもゴギが出ない。やはりまだまだ水も少ない。最初に釣れたヤマメもゴギゾーンのこの流れもなんだかくたびれきっているみたいだ。
僕も毎度のことながら暑さと湿気が重くのしかかって、かなりバテ気味だ。さらに偏光グラスはすぐ曇るし、汗が目に入ってしみて見えないし、ストレスがたまる一方だった。
いい加減くたびれて石に腰を下ろした。帽子もバッグもとる。今年は夏からベストのかわりにバッグにしたから、その点は軽快でいい。去年は禁漁までずっとベストだったが、よくやっていたと今更だが思う。
座ってひと息つくと改めてセミの声が押し寄せてくるようだった。
禁漁前にはサワガニもよく見る。
もはや川の地形と化す大きな倒木。
ハッとした。ちょっと寝ていた。たぶん2,3秒?
川の水で顔を洗った。うん、少しシャキッとしたか。
フライを新しくエゾシカで巻いたものに変えてみた。ポイントもちょっと目つきを変えて攻めてみる。水が少ないからあまり変えようがないが、それでも漫然とやるよりは期待が持てる。
木の枝が覆い被さるその下。苦手なサイドキャストが一発で決まった。
今年の渓流はどうだったんだ?、と聞いてみたい。
最後のフライはエゾシカで。
ツリフネソウの咲く水辺。釣り場に相応しい花。