2017 釣乃記
第十四話  悪いけど、ゴギ釣りに
(やっぱり水位が高い) 僕は迷った揚げ句、やはり準本流のポイントを攻めてみることにした。
何度目かのこの流れ、来る度に水位は上がってきている。山ではけっこう雨が降っているのだ。
毎回必ずヤマメが出てはくれる。しかし掛からない。今回は小さめのアントフライを準備した。大場所だが今までのフライサイズで掛からなかったのなら、小さくするしかない。
一投目が一番のチャンス、慎重にキャスト。ヤマメは出なかった。
今年はゴギ域の谷に入るのは実に二度目だ。
一度目は春に神奈川から釣友が来た時に、増水の里川を諦めてなんとか釣果を得るために入った谷がそうで、それ以来だった。
なぜ今年はこうもゴギ釣りに行かなかったかというと、まずは熊が怖かったからだ。
ニュースで熊出没が取りざたされているのが直接僕の釣りに影響するかどうかだが、ほかの釣友も遭遇する回数が明らかに違うと言っているし、無関係ではない。
もう一つは執拗に準本流のヤマメを狙い続けたからだった。
葉からこぼれ落ちそうな水玉と、空からこぼれそうな雨。
細流のさらに奥へ。ゴギさんのご機嫌をうかがいながら。
向かった谷はかなり薄暗い。偏光グラスは場所によってはない方が見えるくらいだ。僕はCDCアントを結びキャストした。CDCの白いポストがよく見える。木々は頭上の高いところを覆っているのでキャスティングは楽だ。不思議な事にこの谷もクモの巣がほとんどない。ブヨも寄ってこず、湿気のこもったような蒸し暑ささえなければ言うことない条件だ。
しかし、肝心のゴギの反応がなかった。王道ポイントには出ていないと思っていたので、あえて攻め難い隅っこの方を狙い撃ちでキャストしてみた。それでも出ない。しばらく釣り上がってみたがどうにも気配がないので、一度上がろうかと考えた。
するとぱらぱらと雨が落ちだした。木々の葉が遮ってくれるからひどくはないが、これは状況が変わるかも知れないと思った。
なんだかボウス回避の保険みたいでスミマセン(^^;)
目当てのポイントを3つ、全部反応がなかった。毎回律義にフライに出てくれる、なんて虫のいい事を考えていた。
さて、やることがなくなった。という訳ないが、時間もだいぶ食ったし源流にもぐり込むしかない。
前回の釣りではヤマメがダメならゴギでも、というのはゴギに悪い気がすると思った。
でも結局今回、同じパターンになる。前回ヤマメは釣ったからいいけど今回は釣っていない。
悪いけど、ゴギさん、釣りに行きますよ。
大ケロロ先生! 今年のゴギの釣れ具合、どんなですか?
おそらく今季二度目くらいの小渓流。
雨足は強くなってきた。それでも木々の傘でびしょ濡れになるほどではなかった。
しかしゴギの反応はないままだ。これはひょっとしてヤマメ狙いで空振りだったからゴギにシフトしたことに、ゴギが腹を立てているんじゃないのか?
釣り人の勝手な欲に、鉤を掛けられたりほっとかれたりじゃ、ゴギだって面白くないよな。
って、そんなこと思ってる訳ないか? と考えているとプッとフライが水面から消えた。
僕の心を読み取ったのか、ゴギがようやくフライをくわえてくれた。
枝豆チキンラーメン、おお! 以外と合うっ!!