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其ノ二百六十五 強風とメバルと猫の港
快晴〜・・・、すぎるのもちょっと(^_^;
確か去年も同じ事を思った。
9月の禁漁から海へ行き始めるまでの期間が短くなったのだが、今年はそれが更に早まった。 去年もそう思ったとは言え、十一月にはなっていただろう。釣り具屋の放流会のあとだったから、下旬頃だった。 それが今年はまだ十月中旬なのにもう行こうと思ったのだ。 この日は午前八時が満潮なのでゆっくり出た。目的の島の港には一時間半で着いた。
港に着くと道中すでに気付いてはいたが、やはりかなりの釣り人が竿を出していた。
日中はまだ暑いくらいのこの時期だが、来る人は来るんだなあ。 長い防波堤には人がいないので、そちらに行ってみた。 車を降りて初めて気付いたがかなりの強風だ。これは計算違いだった。 徐々に潮は下がっているはずだがそんなことよりも風に悩まされそうだ。
今回はこの島のこの港で。
高い防波堤から釣っているとフライだと特にラインが風であおられてしまう。
自分でリトリーブしていなくて風に引きずられたフライにはメバルはまず食いつかない。たとえ潮や水温が条件が悪くたって風がなけりゃもっとましに釣りが出来るのに。 小一時間、ロッドを振ってみるが思うように釣りが出来ない。 風に当てられっぱなしで体も体力を奪われてしまうようで、なんだかだるくなってきた。
ちっちゃいメバルがなんとか。釣果は進歩せんなー(  ̄っ ̄)
場所を変えて行ったり来たり。でもどこも強風。
ふと気が付くと、あれほどいた釣り人たちがだいぶ減っている。いや、あとひとりくらいしか見えない。
ようやく潮流が始まってきたのに、みんな帰ったのか? どうやら先に来ていた釣り人は上げ潮から満潮までを釣っていたようだ。満潮から下げ潮になるころは昼に近くなるのでこんな晴れた真っ昼間の水温の高い時に釣りになんてならないということか。のんびり日中の下げ潮を狙った僕が浅はかだった。 ![]() ![]() ![]() ![]()
最後のひとりもいなくなり、港の人影は僕だけになった。
いやそれでも風さえなければまだやりようがあると思うのだが風も一向に止む気配はない。僕は車に戻って風と日光にくらったダメージを休めつつお茶を飲んでソーセージをかじった。さて、どうするか。 場所を変えて小さめの港に移動した。島の山の位置が変われば風も変わると思ったが、大きくは変わらなかった。 小さな防波堤でなんとかロッドを振っていると、猫の鳴き声がした。 声の方を見ると猫が一匹、こちらに歩いてくる。にゃあにゃあとしきりに鳴いている。 きっといつも釣り人にえもののおこぼれをもらっているのだろう。当然僕にも期待を寄せているということか。 ![]()
少しサイズアップ。もっと大きくなってからまたね。
あんまりにゃあにゃあうるさいので僕は防波堤の階段を下りて水位の下がった水面近くで釣りを続ける事にした。
と、なんだ? 何か見える。 防波堤突端の灯台の影が水面に落ちているそこに、メバルがうじゃうじゃいるではないか。 日の当たる風で波立つ所には魚影は一切見えなかったのに。 僕は勇んでキャストした。そこでもうひとつ気が付いた。 ![]()
「ねえ、魚まだかにゃあ。」 「へいへい、もう少しお待ちを」
低い位置でキャストすれば着水後ラインは空中になく、風を受けない。こんな単純なこと、なんで早く気が付かない。
にゃあにゃあ声がする。あの猫のおかげか? 一投目のリトリーブ。この日初めて自分でフライをコントロールできていると感じた。 フライが手前にきたときメバルが反転したのが見えた。一発できた。だがまだ小さい。 僕は防波堤の上で鳴く猫に気付かれないように、メバルを海に返した。 |