其ノ三百九十二  灯について
タイイングするのには机の上に電気スタンドが要る。
部屋全体の照明はまあふつうに照らしてくれればいいやと、最初はそんなふうに思っていた。
引っ越し先の部屋の照明を用意するのに、なんとなく普通じゃ面白くないなと思い始めた。特になにがきっかけかと言うと、近所のショッピングモールにあるお店でクラシックな照明器具を見てからそう思うようになった。
照明器具にこだわるタイプだなんて、初めて知りました。
お店だと広い店舗の空間でだから、光の具合よりも器具そのもののデザインとかに目が行く。
気に入ったものをシェードとソケットと電球を別々に組み合わせて買った。
それはリビング用だが、Macでフライのあれこれに携わることもある訳で、そういうことをする部屋には気に入った照明器具と灯が要る。
と、こんなこと引っ越す前までは考えた事もなかったんだけど、環境が変わると嗜好も変わるものだ。
照明器具そのものと、そこから放たれる光が醸し出す表情もそれぞれ。
二つ目の器具は数日前に買った。友人が遊びにくるからで、それまでにはリビングに二つ目の照明が欲しかった。
一つ目はアルミのシェードに真鍮のソケット、クリアの白熱電球という組み合わせで、やさしい電球色の柔らかい灯がいい感じで気に入った。
二つ目の器具はアンティークなメタルの雰囲気を出す塗装の施してある製品で、上部から光が出る構造やシェードの下のランプガードがかっこよくて買ったが、一つ目とずいぶん雰囲気が違うので、同じリビングにこの二つでいくかどうかはわからない。もう少し先でタイイングをする部屋に二つ目を移動させて、リビングには一つ目に近い雰囲気のものを買い足してもいいかも知れない。
と言っても、実際には表情の違う二つの照明はそれほど相性は悪くない気もしている。次に気に入る器具が見つかるまではやっぱりこのままでもいいか、とも思っている。なんだよ自分、ややこしいな。
リビングもタイイングの部屋もデスクに置くスタンドよりも部屋全体を照らす灯の方が僕にとっては重要だとわかった。
その部屋に居る事自体に密接に関わるのは手元よりも全体を照らす方がより強い。

こんな感じで照明器具にこだわるなんて生まれて初めて。自分でも意外だった。
そうそう買い替えるものでもないので、引っ越しを機にこだわってみるのも悪くない。
ダイナミックな影を落とすART WORK STUDIOのジェイルペンダント。