其ノ三百八十  残暑の海峡へ
カマスチャレンジの朝がやってきた。起きれなかったら諦めようと思っていたが、目覚ましのアラームですんなり起きれた。
目指す島の海峡までは夜明け前なら1時間もかからない。
しかし、出発までと途中コンビニに寄った時間でかなりロスした。結局目的の海峡に着いた時には朝日が顔をのぞかせていた。
セッティングしながら港を見るとベイトの群れが水面をざわつかせている。今が地合いか?
朝焼け〜・・・って、遅いのか!?(>▽<)
一度、ベイトの群れに激しくライズが起こった。何者かがベイトを襲ったのか? すぐにそこへキャスト。しかし僕のフライに食いつく魚はいなかった。しばらくやってみるが、着いた時の地合いらしき気配は消えてしまった。
(場所を変えよう。まだ今なら間に合う)僕は本土と島の海峡のポイントを後にして、島へ渡った。去年通った島の港へ急いだ。そこならいろんな魚種がまだ高い活性で泳ぎ回っているかも知れない。
だがその港は静かだった。釣り人がひとりだけ、防波堤中間あたりでロッドを曲げていた。凪いだ湾内でキャストしたが、チビメバルの反射的なアタックが一回あっただけ。すっかり明るくなるまでこの港で粘ったが、ダメだった。
僕は次の候補地に頭を巡らせた。これ以上陽が高くなると気温もどんどん上がってたぶん釣りどころではなくなる。
朝の場所、島と本土をつなぐ橋のかかる海峡まで戻る事にした。
潮はそろそろ満潮だ。前の夜が十五夜だったからこの日は大潮だった。

よく行く七つの橋の島よりは近くのこの海峡は、今までは通過点でしかなかった。
しかしまだ暑さの残る時期にこの辺りの岸壁の際にチヌがいるのを何度か見かけたことがあった。
そんな見えている魚が釣れるものかとも思うが、僕はチヌ狙いに切り替えることにした。
いつもは通過だけの海峡がこの日の舞台。
車を置き、海峡沿いの道路の脇を歩きながら足元の海を見ていると、大きな黒い影が見えた。
(いるいる。でかいのが)
こんなに簡単に見つけられるとは思わなかったが、釣れる気もしなかった。だいいち掛かったとしても、今のタックルではあのサイズのチヌなんて上げられる訳がない。
ただフライを流して反応を見てみたかった。早速投じる。潮上から流し込むと一発でどこかへ逃げてしまった。うむむ。
ポイントを探して行ったり来たり。魚影は確かにあった。
狭い割に交通量の多い海峡沿いの道路。歩行者が釣り竿を持って歩くのはかなり危なっかしい。
以前チヌを見たのはどの辺りだったか? 僕はまた頭を巡らせた。
島と本土を繋ぐふたつの赤い橋のうち、新しい方の橋の近くに小さな防波堤がある。僕はそこでロッドを振ってみた。
まだ正午までは時間があるがだいぶ暑くなってきた。おそらく30度を超えているな。海峡は下げの潮流が始まり、かなりの速度で潮が流れ始めていた。
音戸の渡船は変わらず繁盛しています。
毎年何回かは乗る渡船の桟橋でも魚影を見たのを思い出した。お客さんがいなのを見計らい、ちょっと桟橋から覗いてみるとやっぱりチヌがいた。
フライを流し込むがまたすぐに逃げられた。こういうやり方じゃないんだろうな、きっと。
対岸に停まっていた渡船がこちらに向かって動き出した。いつの間にか数名のお客さんが桟橋の手前で待っておられた。
渡船の出港を合図に僕はティペットからフライを切り離した。そして今度はお昼ごはんをどうしようかと頭を巡らせた。
そして一年以上振りのちりめん丼がこの日の落としどころ。