其ノ三百八十七  危機的ニャンコ先生の島 -伍-
最高気温20度、霞みのかかった海はまるで春の陽気だった。風もなく穏やかなそれは、釣りには不利な法則に当てはまる。
しかし防波堤外海側の陰の部分を覗いて見るとすぐにそれとわかるマダラ模様の良いサイズのカワハギが泳いでいる。
カワハギはフライで釣れんのか? 口は小さいがけっこう甲殻類も食べるらしいのだが。
日曜日の島は家族連れの釣り人たちがちらほら。なんとものどかだった。
またしてもハゼ。この島の釣りの幸先はどうなのか?
ひと月ぶりの島釣行、しかも七つの橋のかかる島へは春の桜の頃以来となる。
久しぶりなんだから荒れた天気はゴメンだな〜って思ってたが、穏やかだと釣れない。
でも来たからにはやるしかないのだし。
いつものように四番目の島の中央桟橋防波堤から。で、カワハギを見た訳だが全く相手にされなかった。
スーパームーンの前日、大潮の下げ潮、好みの潮ではある。
凪いだ島。いろんな思いが交錯する。
マラブーやカマス用に巻いたフライを試したが、ついてくるけど食いつかないといういつものやつだった。
こうなったら仕方がない。ひと月前のニシキハゼを釣ったダートアクションのパターンを使ってみる事にした。
一投目、なにやらフライに引っ掛かっている。う、ハゼだ。

干潮までもう時間がなかった。僕は三番目の島、ニャンコ先生の島へと向かった。
魚影は見えるがやる気は感じられない。
ちょっと来ない間にニューフェイスがっ! 異形のフライだが、誘う効果はかなりのもの。
この島の港は相変わらず潮流が激しい。
去年の極小フライ極細ティペットは用意できていない。ここでもダートアクションパターンを流し込んで引っ張ってみた。
一投目、流し込んでリトリーブするとフライに猛然とアタックする魚影が見えた。
しかし食っていない。あれはメバルだ。相当怒っている。
二投目で食ったと思ったが空振り。メバルのテンションはマックスかと思えた。
十一月中旬、そろそろイケる頃ではある。
しかしその後、投げるたびに反応がなくなってきた。
もうスレたのか? 早いっ!
日中のメバルだからか、ダートアクションがそうなのか?
少し離れてまた流し込みとリトリーブ。今度は食いつく魚影がしっかりと見えた。
半年振りのメバルの手応えがロッドを伝って僕の手にきた。

海は干潮になり、あれだけ強かった潮流もしばしの休息に入った。
オフになってから、カマス・ハゼに続く三魚種目。
三番目の島、二月以降会えていない灰色ニャンコ先生の姿を探した。
思いがけず新顔の猫がいた。そっと近づくとその先に見慣れた猫が・・・。
白黒のニャンコ先生だった。以前灰色先生とよく一緒にいたがいつの頃からか見かけなくなっていた猫だ。
灰色先生が姿を消して、半年後に白黒先生との再会。これはまだ灰色先生との再会の希望の灯も完全に消えた訳ではない。
また、近いうちに来ます。
白黒ニャンコ先生、相変わらずの強面、うれしいです(^_^;