其ノ三百九十三  地図のない釣り
この一投で釣れなかったら帰ろう、と最後に投げて釣れる事なんて今までに一度もない。だいたいそんなもんだ。

(これはマズイかも)防波堤から覗き込んですぐにそう思った。なんとも生気のない水面。凪いだ海は魚がフライを追うようには到底思えない。
フライのバリエーションはまずまず準備している。とにかくいろんなパターンを送り込んで様子を見るか。
約二ヶ月ぶりの島釣行、海の感覚が鈍ってるな〜(>▽<)
朝の冷え込みは今年一番で、市内でも1度、ちょっと山間部へ行くとー4度くらいまで下がった。
ぎりぎりまでうだうだ悩んでいたが結局島へ向かって車を走らせた。
ちょうどお昼が満潮だったから、釣りを始める前に昼食。火器を使っての外飯はずいぶん久しぶりだった。
食べてから目の前の海でロッドを振ってみたが、反応無し。この日目当ての港へ向かうことにした。
ん? これは渓流の禁漁後の初釣行ランチか?
十二月三十一日、これは少ないだろうと思っていたが、防波堤の釣り人の数はまあ少ない方か? 微妙に間隔を空けて釣り竿が並んでいる。僕はここでは防波堤沿いにキャストしてリトリーブしたい。かなり両サイドの釣り人と離れていないと投げられないから現状は十分とは言えない間隔だ。
そして静まり返った海面。防波堤の影で暗い水中に魚影は見えない。短くキャストして引っ張るがコツリともしない。う〜ん、もう下げ潮は始まっている。ここで粘ってみるしかないか。
冷え込んだ朝のあとは快晴の陽気の日中。風もなくぽかぽかになってきた。中に着ている服を一枚脱いでもいいくらいだ。
ほぼ干潮になってしまった。出発ももたつき欲を出してランチまでした結果、釣りそのものの時間にしわ寄せがきてしまったかたちだ。
もとから穏やかなのに潮止まりでもはや全く釣れる気がしない。
いちおうこの日は2016年の最後の日。釣り納めなどと大袈裟に構える気はないが、釣れなかったら普段の時にボウズになるのよりもダメージが大きいような気がしてきた。
いわゆるベタ凪というやつか?(^^:)
初釣りだとどうしても一匹を手にするかどうかが、その年の釣りを占う重要な行事という位置づけになっている。
そんなふうに考えなくてもいいんだが、やっぱり気にする。
釣り納めはそこまで意識しないが、今回は十二月三十一日と本当に最後の最後に釣りに来た訳だから、終わりよければ全てよし、の言葉に習うと釣っておきたいのはやまやまだ。
果たして次の港は・・・。
サンセットメバルに救われる?
岸壁の際から真下を覗き込んで仕掛けを下ろしている釣り師がふたりいた。やり手だな。
僕は防波堤沿いをひと通り攻めたが最初の港以上に釣れる気がしなかった。しまいには帰って紅白でも見てお酒を飲もうか、とそんなことを考え始めた。
この一投で釣れなかったら帰ろう。陽が傾き、もうボウズ間違いないなと頭で思いながらリトリーブすると、ロッドを持つ手が強く引き込まれた。
道筋が見えないゆえに一匹のうれしさがあると、そう思えた。
結局、夕まづめという有利な時間帯でなんとか・・・。