2016 釣乃記
第拾弐話  午後からの梅雨の前に
「フライですか? アマゴを? どうかな〜?」とその人は怪訝そうな顔をした。
ふむふむ、じゃあ釣って見せればいいんでしょう。
目の前で見せてあげたいところだが、入渓地点までは歩かねばならず、その人も農作業がある。
軽トラを見送り僕は県道を歩き始めた。
イノシシのワナをチェックに行くと言われていたので、どうせなら途中まで乗せてってほしかったな。ぶつくさ考えていたら川へアクセスする旧道が見えてきた。
CDCテレストリアル。やはり黒が反応はいい。
車を停めた場所の横でも釣りはできる。しかしすぐ上流に巻けない堰堤があるので、朝はそれを飛ばして旧道を通り堰堤の上から入った。
時間があとどれくらいあるのか、雨雲レーダーを見ようにもここは圏外だった。
(ここをやってみるか)堰堤までたいした距離はない。もっと別の川へ向かう手もあるが、そうすると西からの雨雲に自ら近づいていく事になるし。
入渓すると見える限りなかなかの流れが続いていた。案外いいんじゃないの、ここ。
辛うじて、まあまあのアマゴが。
旧道から離れていたが、また近づいてきたようで木立の間から集落も見えてきた。
雨はまだ落ちてこない。でもいったん上がって車へ戻る事にした。
車を停めた場所に着く途中で朝の人に会ったらどう言うか? ウソつくわけにはいかずチビアマゴ数匹です、と言うしかない。あ〜、やだやだ。そらフライじゃアマゴは釣れんじゃろ?、って顔されるのが目に浮かぶ。
などとぶつくさ考えていたら車が見えてきた。
ぽつり、あ、きた。雨が落ちだした。みるみる雨足が強くなってきた。まだ川は木々に覆われているから多少ましだが。
フライをキャスト、すぐに出た。小さい。次にキャスト、またすぐ出た。これも小さい
ん〜? しかし、これは?? 
流れが岩盤にぶつかるポイント、ぬるりと良型が出たが空振り。やってしまった。しかし明らかに降り出してから反応が良くなった。
更に進む。瀬尻でピックアップ直前、アマゴが食いついた。
この日、中国地方にも梅雨入りが発表された。
今年はなにかとCDCを良く使う。
時期が遅いとわかっていてもこの日はこの川を選んだ。午後から雨の予報だった。
降り出す前に魚の顔を見るためにとにかく近場の川を、という訳でインターチェンジからかなり近いところにあるこの川にやってきた。車を停めた広い場所で地元の人と話をしたあと入渓したのが9時前くらいだったろうか。雨が降り出すまでにあとどれだけ釣りができるかだ。
朽ちた堰堤が現れた。この川の最大のクライマックスがいきなりやってきた。このポイントを覚えていたのも理由のひとつだ。
ずいぶん前に来た時、でかいのを掛け損なったことがある。その時よりだいぶ様子が変わっていた。堰堤下は砂で埋まって浅くなっていた。丁寧にキャスト。一番良いところを最初に流した。反応無し・・・。ピックアップすると小さなハヤが釣れていた。
ピチャッと飛沫、きたきたちっちゃいのが。
水はこんなものだろう。しかしこの川へ入るには時期的には遅い。
またフライに出た。今度は空振り。これも小さかった。小さいのにしっかりとスレてるな〜。
あまり大場所はない。というか、今回今季初めてmaekawacraft 7'00"の"showma"を持ってきた。
木々の枝葉は伸び、規模の小さな川に入るのにはshowmaがいいだろうと思ったからだ。
小さな川も今季初めてだった。
この川にくるのは10年ぶり? くらいかなあ。
この雨がもたらすものは、果たして・・・。
大葉麻殻が花をつける季節。
旧道沿いの集落を車へ戻る道すがら。