2016 釣乃記
第拾六話  消失する毛針たち
双眼鏡で見た途端にライズした。得てしてこういうものだろう。僕はライズの流れにキャストした。
しかしそのプールは沈黙。どうやらライズの主はこのプールを回遊しているようだ。
そのプールの流れ込み、キャストしたフライの下で銀色が光った。鮮やかなパーマークの持主が姿を現した。

最初のアマゴを釣ったあたりから晴れ間が見えてきだした。曇りの涼しい天気を期待していたが、ちょっと外れそうだ。
CDCのテレストリアルが次々と・・。
長く流れを流しきった肩でぎりぎりで朝以来の銀色が光った。
すでに日は山の稜線に隠れていた。朝のうち、もたもたしてたら釣れなくなるような気がして僕が無意識に焦っていたのは実は的を得ていたようだ。結局日中は一度の反応もなかったんだから。
それにしてもいったいいくつ無くしたのか? クモの巣でのロストはひとつもない。全部枝に引っ掛かけて無くした。
僕はロストしたフライが夏の虫たちの死骸と同化していく気がして下流を向いて見送ることにした。
いくらフライを無くせば気が済むんじゃ〜っ! と言われているような(^_^;
新しい偏光グラスは快調だ。ダークブラウンのレンズは暗い渓ではどうかな?と思っていたが、全然問題なく使えている。
フライはよく見えるし掛け心地もいい。もっと早くに買っておけばよかった。なんにせよよく見えるということはそれだけですごい。

大場所のここぞというポイントで出ない。最近得意の反転流でもダメ。いかん、時間の経過や気温の上昇、日差しの強さが魚の警戒心をあおっているのか?
中くらいの滝つぼプールで魚が頭を出してフライに食いついた。
合わせたが空振り。久々の反応でまずまずのサイズだったのに。合わせたフライは上空の木の枝に引っ掛かった。(またか)やけで引っ張ったらフライは枝から外れてくれた。
それにしてもよく引っ掛ける。細流に慣れていないのと、そこそこティペットが長いのが原因か。
気を落ち着かせるために昼食をとることにした。リラックスできるローチェアでのひと時。
コロッケニャンコ先生っ! 今週も来ましたっ!
一週間前の増水時から見るとかなり減水している。というか、もうすっかり平水だ。
また流れで銀色が光る。出方は渋いが魚はしっかりと残っている。
しかし日差しの加速度は上がる一方で、青空がのぞくたびになんだか焦ってしまう。
(まだ時間が早いうちに少しでも釣っておかないと)
僕はまるであと少しで魚が釣れなくなると思っているかのようにフライを投じ続けた。
木の枝にフライが引っ掛かった。この日最初のロストだった。
かなり細流へ入るようになってきたな〜。
木漏れ日の水辺でひと休み。
びっしりだったフライトラップもかなりスカスカに。
鮮やかパーマーク。朝のアマゴ。
場所を移動しての後半戦。すっかり気温は上がりきった感がある。
影の流れを探るが、それは木の枝がかぶさっている場所でもある。ポイントを探るよりも枝にフライを引っ掛けないよう気をつけた。
奥に長いフラットな流れ、水面スレスレにキャスト。バシャッと出たが空振り。あ、また合わせたフライが枝に掛かった。
引っ張ると取れた。が、今度はその反動で反対側の枝に引っ掛かった。なんなんだこりゃ? もうどうにもならん。
紫陽花街道は今年も盛況(*^^*)
「あ!?」 またフライが木の枝に引っ掛かった。今度はなんとか回収した。やはり小さめの支流でこの季節だと思いきったキャスティングはできない。ティペットもひと月くらい前から比べるとだいぶ短くせざるを得なかった。
前回様子を見た時はかなりの増水だったこの川だが、その時にクモの巣が取り除かれたようでもあり、前方のラインを通すルートは割りとクリアだ。バックキャストでまたロッドが止まった。枝に引っ掛かっている。フライふたつめロスト。
朝、数匹のアマゴを釣ってからあとはずっと反応がないままだった。朝のワンチャンスだけがこの日用意されていた可能性だったのか? いやそうは思いたくないな。僕は次のポイントへキャスト。っと、また引っ掛かった。油断した。みっつめ。