2016 釣乃記
第拾八話  赤とんぼの川のアマゴ
ふたつの期待のうちのひとつ、水位の方は外れだった。
前の日、雨雲レーダーではこのエリアは結構降ったようだったがお湿り程度だったのだろう。
市内でも激しく降ったので同様の雨量を期待していたのだが。
とにかくやってみるしかない。カラッカラの渇水でもないし、希望はまだある。
この時期、狙い通りクモの巣はおおかた消えていた。それだけでもずいぶんと釣りがやりやすい。
それは季節の変化を表すものでもあった。
コロッケと天むす。コロッケうまかったですー。
また暑い町への帰路につくσ(^_^;)
数回バシャッと出たが合わない。
目星をつけていたポイントはことごとくダメで、葦で埋まって進めなくなる場所まであとちょっとのところまで来てしまった。
気が付くと雨は止んでいて青空が覗いている。雲の切れ間からサッと日が射すと一気に夏になった。
と、日のギンギンに当たる流れにフライが差し掛かった時、ニョキッと魚が飛び出した。
呆気に取られるより先にフッキングできた。直感で今日はこれ一匹しか釣れない、と思った。
のそのそと準備を始めた。火器を扱うので暑さが加速する。風が吹かないので余計にこもる感じだ。
冷凍チャーハンとラーメンを作りかきこんでようやく落ち着いた。

イスに座って目を閉じたが暑くて眠たくならない。
全く今年の夏は異常だ。この時期に山の川へやってくれば多少なりとも涼しさを感じられていたのに。
ふたつ目の期待は涼しさだった。釣り仲間の情報では日中でも24度の日があったらしい。
コロッケニャンコ先生っ! また釣りに来ました。
今日はコロッケ、買いましたっ!!
クモの巣がなく水も平水なら歩くのは楽だ。その分どんどん前へ進んでいける。
ま、魚が釣れないんだから、というのもあるんだけど。
パラパラっと雨が落ちてきた。川に着くまでに何度か降ったり止んだりしていたが、この辺りはまだ薄く雨雲がかかっているようだ。

前の日の雨が降るまでは長い間雨らしい雨は降っていなかった。
ようやく重い腰をあげて釣りにやってきたが、釣りの雲行きは怪しい。
長く釣り上がって、ようやくのアマゴ。
こんだけ葦に迫られたら引き返すしかな〜い(>_<)
釣行ランチは冷凍炒飯300gとコロッケ塩ラーメン。
夏の平水は渇水を意味すると言ってもいい。
何度もすくい損ない、ようやくネットに入ったのは朱点鮮やかなアマゴだった。この一匹までがなんと遠かったことか。

葦密集区間に着いたので一旦車へ引き返すことにした。ちょうど正午を回った頃で、日差しも強くなり汗が吹き出る。
車に着くとぎりぎりで木陰になっていた。やれやれとばかりにイスを出しまずは座る。
ランチの仕度をしようと思うがなかなか動き出す気になれなかった。
不意に赤とんぼが僕の前に飛んできた。僕の前で停止したり飛んで逃げたりを繰り返す。
僕が指を出すとすぐに止まった。
(今日はこれくらいにしとこうか)と僕は思った。粘ればまだ釣れるかも知れないが、こんな感じで釣りを終わる日があってもいいと思った。

川沿いの道を下っていく途中、集落の田んぼには赤とんぼが群を成して飛び回っていた。
今年の秋もアマゴ同様少し遠いかも知れない。
スレていない赤とんぼ。人を全く怖がらない。