2017 釣乃記
第参話  ライズ詣で 朝な夕なに
道の駅の手前、見覚えのある車。今季三度目の釣行にして三回目のW氏との遭遇。今回は釣りを始める前だった。
W氏はこの日釣行を一緒にする方と待ち合わせだった。ひとしきり釣り情報を交換し合う。
それにしても寒い。風もある。まだ時間は早いからゆっくり始めますとW氏に言い、僕は釣り場へ移動した。

町の道が混む前に通過したいから朝は早い。結果釣行エリアへの到着も早く、まあじっくりと準備ができてそれはそれでいいか。
ルアーのフローティングは面白そうだ。
「フライは高いけようやらん」と彼。そうそう、我ながら結構な投資はやっているなあ。楽しさの投資対効果は十分にあると思っているけれど。
ルアーの彼が釣りを始めた。僕はぼんやり見ていた。彼がほどなくして川から上がると、入れ替わりに別の釣り師がやってきた。釣り具屋でよく会うSさんだった。ルアーの彼がやると思って対岸に移ったが、彼はすぐに上がったので戻ってきたらしい。
最初の流れを釣り終えた頃、ようやく暖かくなってきた。
合流点に戻るとSさんは居なくなっていた。かなり陽が傾いてきている。
僕はしばらく流れを見ていたがライズはなかった。でもハッチはだらだらと途切れず続いていた。
するとまたSさんが戻ってきた。結局ここでは釣れずほかの場所でヤマメの顔を見てきたと言う。
Sさんは帰り、僕は最後のあがきでキャストしてみた。
一投目、いきなり出たが空振り。その後小一時間、薄暗くなる中4〜5回は出たがすべて空振りしてしまった。
クリップルダンを巻きたかったが時間がなかったのでCDCの半沈み。
日没が近い。いつまで粘るのか〜?(^^;)
最初の釣り場を終え、ちょうどお昼くらいに次の狙いのポイントに向かった。本流と支流の合流点の王道ポイントだ。この時間帯ならたいてい釣り師の車が停まっているのだが、幸運な事に誰も来ていない。僕は車を乗り入れおにぎりをほおばり(この日は手抜きで釣行ランチは無し。ライズ狙いだと昼食に時間はかけにくい)、そのあとすぐに川に下りた。ハッチはある。大小様々な複合ハッチだ。水面はと言うと、ライズはない。しばらく様子を見る事にした。

本流の釣りをする時は途中から支流細流へとはなかなか気持ちが向かない。本流は今だけのというのもあるし、大場所の釣りのスイッチが入ると簡単には切り替えられない。
増水の支流でなんとか一匹。
ライズが始まる様子はなく、僕は支流本流合流点を何度か流した。
しかし反応なし。仕方なく川から上がると軽トラが停まっていてルアーマンの人が仕度をしていた。
「あ、あんた見た事あるで。去年の解禁の頃」
「あ、お寺の横で停めてた時の」
僕を見下ろして釣りの情報を教えてくれた長身の若い人だった。
「仕事の途中なんよ。ちょっと投げてすぐに仕事に戻るんよ」と彼は言った。ここでまた釣り談義。
今季はグラスロッドでフローティングをすると言う。
話はさかのぼって午前中。
この日最初のポイントですぐライズがあった。しかしその後沈黙。
待ったりキャストしたりを繰り返しつつ時間だけが過ぎた。
しばらく休ませてまたキャスト。
向かい風にラインが安定せず何度かフォルスキャストを繰り返していると、突然水面にヤマメがジャンプっ!!
これはA River Runs Through Itのシャドウキャスト再現かっ!?
その直後のキャスト、フライを見失った辺りで水飛沫が激しくあがった。
ほんのり桜色のヤマメ。もうじき桜も咲き始める。
Sさんは先週もこの合流点ポイントで釣りをしたそうで、ほんのわずかな時間だけかなりのライズがあったらしい。
僕は午前中の最初のポイントで粘っている間にここの良い時間は逃してしまっていたのかもしれない。Sさんは僕とルアーマンがやったあとのポイントを少し休ませてからやってみるという。僕は合流点から支流を上がってみる事にした。
本流では感じなかったが支流に入ると水が多く遡行がしんどい。上流から吹いてくる風にティペットとフライは押し戻されてしまうから思うように攻められない。
かなり手前に落ちたフライが僕のすぐ前まで流れてきた時にラインとリーダーの結び目に反応があった。もしやと思ったがそのすぐあとにフライが流れてきたら案の定ヤマメが食いついた。