2017 釣乃記
第四話  四月の冬と春
一度だけライズが見えた。Sさんもその前にも見えたと言っていた。僕は川へ下りてラインを引きだした。
フォルスキャスト中に垂れたラインが流されてシュートしても思うように飛ばない。やっぱりアレを使おう。僕は車に戻りラインバスケットを取り出した。メバルで使ったのをそのまま車に積みっぱなしにしていたのだ。
バスケットを使うとやっぱりキャストの距離は伸びる。しかしフライに魚が出ることはなかった。
「これから始めるんか?」僕が川に下りて糸を直していると土手から声がした。
振り返るとM川氏とYgさんだった。二人は一緒に釣り歩いていたようだ。
二人ともすでに良型を釣ったようで、それを聞いてまだ釣っていない僕は焦った。
僕はそのまま支流を釣り上がった。少し進むとライズが期待できる場所がある。
雨は時折ぱらつくが、本降りになる気配はなかった。
本流へ向かう。ラインバスケットまで装着したのですが(>▽<)
ロッドが軽くなった。大きかったかも知れない。
更に奥でもライズしていたはず。そこへキャスト。出た!合わす!
切れた・・・。
いかん、落ち着こう。
フライをやり変えた。クリップルはこれが最後だ。一番奥へキャスト。と、バックキャストで葦に引っ掛かった。落ち着こう。
もう一度キャスト。着水と同時に出た。今度はフッキングした。水中で魚体がうねる。
小雨になり陽が射してきた。急に春が僕を取り巻いた気がした。
思ったより早く雨雲接近。
ようやく雨もあがり、春らしい風景が戻ってきた。
流れが直角に曲がるポイント。ライズはない。キャストすると手前に落ちた。ハヤが出た。
少し奥へ投げると思い通りの所に落ち、流れた。なにも出ない。あれで出ないか? フライはCDCを付けた半沈みパターン。変えてみることにした。同じ半沈みのCDCクリップルダン。今季なにかと気になっているフライだ。今回は巻いてきた。
先程と同じ所に落ち、同じように流れた。今度は出た。重たい引きがバンブーロッドに伝わる。最初に僕が投げたフライとそんなに違わない気がするのに。クリップルダンの威力を改めて知る思いだった。
さらに上流へ進むと今度こそライズが期待できるポイントが。と、雨が落ちてきた。本降りになりそうな勢いだった。
クリップルダンで春のライズを攻略!
Sさんは別の場所へ移動していった。僕はこの場所に来る前に同じ本流筋のもう少し上流でもロッドを振っていた。
そこで最初の雨が降り、一気に冷え濡れた手がかじかんでそこを諦めた。車で暖まらないとヤバい。
そしてここも。本流二ヶ所をやったので、これ以上やったら本流と心中になってしまいそうだ。僕は支流に入る決心をした。

支流沿いの道路で見慣れた車とすれ違った。おそらくW氏だ。今季四釣行で四回とも遭遇している。
ポイントに到着。雨は降り続いているが朝の冷たい雨ではなかった。虫もちらほら飛んでいる。
そしてライズっ! 手前で奥で。
僕は気がはやった。先程釣ったクリップルダンをティペットを切って結び直した。風もない。ロングティペットも活かせる。
一投目、手前すぎた。ハヤがくわえるがほっとくと放した。
いかにもヤマメらしいライズで水しぶきが上がった。今度は外さない。その数m先にキャスト。すぐに出た。ラインを手繰ろうとしたが雨で濡れてロッドにひっついていた。手繰るのにもたついた。
さんざん失敗してそれでも出てくれたライズの主。
にょきにょきと春が伸びてきています。
ややこしい流れから引きずり出しました(^^;)