2017 釣乃記
第六話  四月の荒れる夏日
少し前から薄々感じてはいたことだった。ひょっとしたら認めたくないが故に気付かないふりをしていただけかもしれない。
でもそんなふりは長続きするはずもなく。

東から来たKさんとの釣りの時に満開の桜を見れたから、この日は期待していなかったが、かなり開花時期に地域差があったようで、このエリアの桜も見頃に来る事ができた。
桜吹雪が舞い、川面に花びらの帯ができていた。
非常に快晴の釣り日和・・・というか、晴れ過ぎか? 尋常ではない紫外線が降り注ぐのが、見えてないのに目に見えるようだ。
四月に入り本流の釣りがむつかしくなったのを機に、準本流(というかひとつめの支流)を最初から目指す。

今年はなにかしら釣り場で仲間に会う事が多い。今季の釣行で誰にも会わないのはまだなかったはずだ。
しかしこの日は妙にひっそりしていた。まさかなにか予見するものがあった訳ではないだろうけど。
今週も桜を満喫。穏やかな休日・・・のはずが?
シリナガマダラカゲロウは安定したヤマメの食事の供給源か?
結局二ヶ所目のポイントは全く反応がなかった。僕はかなり汗ばんできていた。こうなるとしばらく釣れる気がしない。車に戻って休憩し、午後をまわってからの釣りに備えよう。
ここしばらく昼食はコンビニのおにぎりのみで、あれほどやっていた釣行ランチはやっていない。お昼時のチャンスを逃さないために、昼食を簡略化するためだ。しかしもうそろそろ再開してもよさそうだ。日中の釣れない時間帯はお昼を食べて昼寝をする。これがけっこう気持ちいい。でももうそういう釣りのタイムテーブルの季節になってきたんだなあ。
最後の一匹。ああ、しかし・・・。
ハッチは散発的だった。お決まりのライズポイントに着くと期待するライズはなく、神経質なチビヤマメかハヤか? という類いのライズだけが時折見られた。
良型の付き場の筋を流す。今季好調のクリップルダンにスッと白波が射し込まれたように見えた。
合わすとドスンと手応え。うん、良い釣りだ。僕は気分が開放されるのを感じた。
さらに期待の持てるライズポイントに移動。時間の経過とともに気温はかなり上がり、ライズへの期待値は下がっていた。
上々のヤマメ。ひと月前とはコンディションが違う。
むぎゅっ! なんか踏んだ!?
ハッチはさらに加速し、渓の賑わいはより一層。
しっかり合わせた。だがそのあとラインを手繰るのが遅れた。ラインがフッと軽くなった。
なんという失態、いや仕方ない。気を取り直して更に先のポイントへキャストした。
また一発で出たっ ラインを手繰る、いや遅いっ! またバレた。
にわかには信じられなかった。こんな失敗を二度続けて?
少し前から薄々感じてはいたことだった。今季、ラインの手繰りでバラすことが何度かあった。
この日今年初めての夏日が記録されていた。
14時過ぎ、さすがに夕方までは待ってられない。そろそろ次の釣り場へ移動する。
去年もまずまずの型が釣れた場所。時期も時間帯も去年と同じくらいだ。現場に着くと水位もこれまた去年と同じくらい。条件はぴったり一緒だ。
姿を消していたカゲロウがちらほらと飛び始めた。ライズはないが期待は出てきた。
何度かキャストしつつ歩を進める。流れのど真ん中、いきなり出たっ!