2017 釣乃記
第七話  四月の荒れる夏日 -弐-
何年か前にも同じようなスランプ(?)におちいった事があった。
バラしのオンパレード、その日の帰路に負ったダメージは計り知れない。
で、その時はなにをしたかと言うとバーブレスフック以外にマイクロバーブのかなり魚へのダメージが軽減されていると思われるフックを使ったフライを用意した。

「ひゅーっ」っと声がした。見ると土手に見覚えのある車と顔があった。体調を崩していた釣友だった。
前回の連続バラしのトラウマを引きずっていないか、好ポイントを前にする度に僕は幾分緊張した。
この日のメインの川、先程釣友と会った川の支流になる。
予報ではこの日も夏日になるようで、すでに少し汗ばむくらいだ。
ライズを発見。その1m先にフライを落とした。すぐにフライは呑み込まれ、僕は平常心で魚を寄せた。まずまずのヤマメ、フライはバーブレスだった。
(前回はたまたま運が悪かっただけか? 案外こんなものかも知れない)と僕はそう思う事にした。
ケロロ先生、ようやくのお目覚め。まだ寝ぼけ眼(^^;)
やや天気が荒れてきそうな気配が。
支流の流程の少し下流域にさがった。夕方になればライズの期待できるポイント。まだその時間には早いが今時期なら日没をまたなくてもハッチとライズがあるはずだ。
ここはマイクロバーブのフライを結んだ。ティペットもやり変えて合わせ切れにも対処した。しばらく待つとバシャッとライズ。続いてハッチもちらほら。釣り人が待つとちゃんとハッチもライズもしてくれる。ご丁寧なおもてなし、しかしこれから先は実力で勝負しなければならない。
流れの筋の下流側は小ささそうなライズだ。ポイントの核心部とも言える河畔木がせり出している辺りを流すべきだと判断した。
ほぼ夏の雲が流れる。まだまだ荒れそうだな〜。
これから家族の運転で実家へ帰るのだと言う。まだ体力は復活していないはずだが大丈夫か?
川の様子やハッチの状況などの言葉を交わし、彼は土手の先へ進んだ。
こりゃきっと釣りをする気だな。でもまずまず元気そうな顔を見れて僕は安心した。

数年前にマイクロバーブのフックを教えてくれたのが彼だった。この日もそのフライを数本巻いてきた。これでバラし病に歯止めがかかるのかどうか?
このヤマメはバーブレスで。なにがどう違うのか?
かろうじて獲ったライズの主。まだまだ修業は続く。
一投目、いきなり出たっ! フッキング成功、だがまたラインを手繰るのにもたついた。バレた。バーブの有り無しではなかった。
なんだろう、このラインを手繰る時の失敗は。歳をとって反射神経が衰えてきたからか?
河畔木より更に上流側へもう一度キャスト。また出た! 別の魚か?
僕は今度は死に物狂いでラインを手繰った。
そこまでしなくていいという勢いでヤマメをネットですくった。無様に荒れているのは自分なのだと、僕はようやく気が付いた。
人にスレていないカゲロウ。ヤマメもこうだったら。