其ノ三百七十  危機的ニャンコ先生の島
ニャンコ先生の島、曇っていたせいか暗くなるのがやたら早い。
僕は焦って細糸小型フライにシステムチェンジした。
照明の多い浮き桟橋はすでに先行者で占められていた。僕は浮き桟橋の陸側で流し込みを開始。
三連続ヒットを二回経験したこの場所このやり方。しかしこの日はやっぱり反応無し。雨の影響か、わずかに時間帯が遅かったか。
僕は突然我に返った。こりゃもう打つ手がない。なんかもっとこう明るいうちからマシなやりようがあったんじゃないだろうか?
昼食後、港をふたつ巡り粘ってみるも見事に反応がない。
空はずっとどんよりで風は吹いたり止んだり。下げの潮流も始まり釣れる条件は満たしている。
でも、メバルにしてみればそんな事じゃないんだろうな、きっと。
また夕まづめにニャンコ先生の島で細糸小型フライ流し込み作戦でいくか。この七つの橋の島に来た時はそこに頼るパターンが多くなっている。これはちょっと問題だ。僕がフライで釣れる場所がかなり限られてきつつある。
波打ち際を歩いて予想以上の波に靴の中が濡れる、の図(^_^;
そろそろ満潮、どうやら今回はダメなようだ。
前にこの港に来た時は早い段階で一匹釣った。小さくても釣ったらとりあえずは安心だから。
次の港へ移動。しかしそこも魚の気配はなく下げ潮が始まるまではあがいても無駄な抵抗のような気がしてきた。
最初の港では近くにいたエサ釣りのおじさんが「満潮まではがんばる」と言っていた。おそらく朝からやってるんだな、きっと。
遥か南、四国のあたりは晴れ間が見える。
今回は流木でしっかりセッティング。ひっくり返すことはありません。
この日はまたしても二度寝してしまったので、七つの橋の島の午前中の上げ潮は間に合わなかった。
二ヶ所つついて昼食。前回のうどんをひっくり返したのを教訓に、
流木でランチ場を作っての準備。

週の始めから積雪、そしてまとまった雨。この日は気温も低くようやく冬らしい感じがしていた。
北部では水道管破裂による断水が続いており、記録的な低温だった。それと雨の影響は海の中にも及んでいよう。なんだか作ったラーメンが冷えるのもやたら早い。
今まで釣り上げたメバルの中で引きの強さは過去最高。
「メバルっすか?」若い二人連れが話しかけてきた。「はあ、まあ」と答えると「どおっすか?」と効いてくるので「いや、まだ釣れないです」と僕はそう言ってそそくさと場所を変えた。
灯台のある防波堤。最近はここの方が調子がいい。足元は広くて安全だが明かりがないのが難点だ。
前回、ここで強いアタリがあったがバレた。細い糸は切り、切ったところに白のマラブーパターンを結んだ。もうほぼ見えないので糸やフライチェンジはこれが最後だ。
白マラブー、暗い海の中でもメバルにはちゃんと見えている。
暗くてキャスティングは不安なので、バックキャスト一回ですぐシュートしてリトリーブ。何度か繰り返すうち急にラインが動かなくなった。
ギャーっと叫び声! 何かと思えばいつの間にか鷺がすぐ後に居て、そこへ別の釣り人が歩いてやってきたので飛び立ったのだ。
ぐぐんっ!!とロッドが絞り込まれた。やっぱり魚っ! でかい!
釣り人が僕の後を通過するのとロッドが軽くなるのが同時だった。
・・・、切れた。
あっという間に闇。島の夜は町よりも圧倒的に光が少ない。
三ヶ月ほど前、初めてアジを釣った港は海のフライフィッシングでは初の港だった。実に何年ぶりかの新規開拓釣り場だけど、それ以外で週末に出向く主な釣り場は今回の七つの島、それに県最南端の島。それだけだ。それらにもたくさん港がある訳だけど、結局釣りをする港も決まっていて、釣り座となる場所も一緒。なんだか変わり映えのしない海の釣りになりつつあった。
この日の最初の港は二回目の場所だが、アジの港同様辛うじて一匹釣っているだけなので、今後も釣りに来るかどうか微妙だ。
しかしうだうだ考えて迷っているヒマはなかった。まずはボウズ回避が最優先。島の時間はゆったりのような気がするが、夕まづめに絡む前後の時間は潮止まりとも合わせてみるみる時間が過ぎる気がする。釣りの場合に限るしこの時点まで釣れていない場合は余計にそう感じるのは釣り人特有の心理だが。

ニャンコ先生、僕のソルトの釣りよりお仲間が気になりますよね?(^_^;
気が付くと防波堤の突端側には4人くらいの釣り人が入ってきていた。
みんな日没後の上げ潮狙いだろう。
ラインブレイク後、なんとかまたマラブーを結んでの数投後、またラインが動かなくなったっ!?。 

やはり日中よりも夜の方が型はいいようだ。それは暗くなってからやって来る釣り人の多さでもわかる。でもこれがコンスタントに成立するなら僕の日中の釣りはなんなのか。
ニャンコ先生に会いに行くとすぐに駆け寄ってくれた。先生、ソルトの釣り、難題にぶつかりました。